2010年5月19日水曜日

GDP、雇用増…実現可能性に疑問の声 温室効果ガス削減 環境相試案

 小沢鋭仁環境相は、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減する目標の達成に向けた具体策の展開方法を示す「ロードマップ(行程表)」の試案をまとめた。それによると、温暖化対策の投資促進で国内総生産(GDP)や雇用が増えるとし、成長の柱にもなるとしている。小沢環境相はこれを政府としてまとめる行程表のたたき台にし、今 webmoney 最安値
国会で審議する地球温暖化対策基本法案を踏まえた行程表づくりの進め方を決める見通しだが、試算について専門家の間からその実現可能性について早くも疑問の声があがっている。

 ◆30年までに投資回収

 環境相試案は、同省の専門研究会「中長期ロードマップ検討会」の報告書をベースに作成。検討会では、国内対策による削減幅の想定を3
パターン(15?25%)としていたが、環境相試案では25%削減する方向に一本化。それを想定して、分野ごとに削減の道筋を示した。

 「日々の暮らし」では、高い省エネ性能基準を満たした新築住宅を20年に100%とする目標などを提示。ハイブリッド車や電気自動車などの環境対応車の新車販売台数を約6万台(05年)から約250万台(20
年)に拡大するという姿も描いた。

 さらに「ものづくり」や「エネルギー供給」分野でも踏み込んだ温暖化対策を積み上げることを前提に、11年以降10年間に投資する額を試算すると、最大で約100兆円の追加投資が必要だ。

 ただ、省エネ技術の効果で節約されるエネルギー費用によって、20年までに投資額の半分、30年までに全額が rmt
回収可能という。太陽光発電や高効率給湯器などを導入した新築住宅を検討する世帯の追加投資額が240万?290万円の場合、補助金などの優遇措置や節約効果によって10年内で元がとれるとした。

 また試算では、投資に見合う経済効果が得られる点も強調した。伴金美?大阪大学大学院教授の分析結果によると、再生可能エネルギーなどの分野に積極
投資し低炭素社会への変革を促すと仮定すると、国内対策だけで25%削減するケースでもプラスの効果が生まれる。

 20年時点のGDPと雇用は、対策を強化しなかった場合との比較で、ともに約0.4%押し上げられるとの結果も明らかにした。

 ◆新興国市場考慮せず

 小沢環境相は温暖化対策を通じて「環境と経済の両立から一
歩踏み込んで“経済と成長の両立”を示したい」との姿勢を強調するが、試案で描かれた“バラ色”の低炭素社会像をめぐり、懐疑的な見方も広がっている。

 疑問点として浮上しているのが、行程表を実行した場合の経済効果を導き出す際、中国やインドなど日本経済と密接な関係にある新興国市場の影響を十分に考慮しなかった理由だ。

 環境省は「諸
外国の動向を織り込むと、国の数だけ不確実性が増すため」と説明する。しかし、世界を舞台に市場開拓を進める日本企業にとって、温室効果ガス排出量の「25%削減」が国際競争力の低下や生産拠点の海外移転につながり、雇用喪失や財政悪化などを招く動きは無視できない。

 逆に、試案では不確実性の高い革新的な温暖化対策技術については具体的に
記載している。例えば、火力発電所など大規模な排出源で発生するCO2を回収し地層や海洋に貯留する「CCS」の大規模実証や関連法制度の整備を推進。20年時点のCCSによるCO2回収量を最大440万トンとする。

 CCSは温暖化対策効果が高いと期待される一方、初期投資額が大きく経済性に課題がある。加えて、効果の持続性や環境への影
響の面でも調査や検証の余地が残されているが、環境省はG8サミット(主要国首脳会議)の合意を受けて途上国を含む世界全体で20年の実用化を目指すパイロットプロジェクトが活発化することを踏まえ、「不自然ではない」とする。

 ◆経産省とも齟齬  

 この点でも、経済産業省の思惑と異なる。2030年に向けたエネルギー政策の指針
「エネルギー基本計画」の改定作業を進める経産省は、3月24日に骨子案を公表。そこにもCCSの早期商用化が盛り込まれ、大筋の方向は環境省と一致した。ただ「実現可能性に対する検証が必要」とし、最大限努力しても200万トンの回収が限界という。

 21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹は、13年以降の温暖化対策の国際枠組み(ポスト京都
議定書)づくりの行方に不透明感が漂う中、「目標の置き方を20年から30年に変更し、エネルギー基本計画との整合性もしっかりと図りながら行程表に盛り込む各種対策の分析を行うべきだ」と指摘。その上で「20年までだと既存技術の延長線上だが、30年までだと対策の選択肢が広がる」と力説。世界の行程表づくりを日本が強い意思で主導する可能性に目を
向けるべきだと問題提議する。

 試案を各界で議論してもらうため「国民会議」を立ち上げたいとする小沢環境相だが、一連の疑問点を払拭(ふっしょく)するためには、「地に足のついた」論議が求められる。(臼井慎太郎)

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引用元:鹿児島市歯科の総合情報サイト